立場。

戸籍上の父親が、心筋梗塞で倒れたらしい。
会わなかった15年の間でどうやら再婚していたらしく、看護士の奥さんに処置してもらえたようだ。
カテーテル治療で一命を取り留めたらしい。

彼の存在に対して一応父親という認識はあるが、6歳以降の記憶がない。
あえて言うなら、中学生ぐらいの時に兄を殴った音と、
姉に借金相談をしてた横で座っていたのと
高校生の時に爺ちゃんの葬式に行った時だけである。
今回、父親という存在の命の危機に際して色々考えてみようと思ったが、残念な事に何も思わなかった。
人間としていかがなものかと思うが、言葉は悪いが、種馬以上の何者でもなく、私はなんと感謝の念に欠けたクズなんだろうと思った。
それに、こんなに冷たい人間かと思ったが、彼と私を結ぶ関係も言葉も思い出も何もなかった。
人が死ぬかもしれない瀬戸際に、本当に何も思わない自分に残念に思うと同時に安堵した。
彼は、真に私の父ではなかったのだと納得できたからだ。

私は憎しみの感情をキープし続ける事ができない。
今になっては、母に私を堕ろせと迫った父を憎むことすらない。
彼はただの人であり、ただ少し知ってる男が死ぬだけなのだと。
ただそれだけ。ただそれだけ。

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